庭コラム
季節を楽しむ、自然とつながるひとときを。
庭と器と私の時間
庭やテラスで使いたい器をシーズンごとの場面に重ねて提案するこのシリーズ。
ライフスタイルショップ『THE COVER NIPPON』のクリエイティブ ディレクター・松坂香里さんのナビゲートでお届けします。
一年を締めくくり、新たな年神さまをお迎えする準備を進める12月。慌ただしいけれど、家族や親しい人とおいしいものを囲む機会が増え、どこか心浮き立つシーズンでもあります。家族みんなでいただく年越し蕎麦も、そのひとつ。大晦日に蕎麦を食べる風習は、細く長い蕎麦の様子に「健康長寿」を、また、切れやすいところに「一年の厄を断つ」という意味を重ねて、江戸時代に始まったと言われています。
この年越し蕎麦、今年は手打ちで楽しんでみるのはどうでしょう? 庭のテラスでなら粉が飛び散っても気にならず、豪快にこねられます。お父さんが腕をふるい、お子さんもお手伝い。ちょっと不格好でも、打ちたての蕎麦は格別です。
今月は、そんなシーンに似合う“蕎麦猪口”をテーマにお届けします。
今回ご紹介するのは、有田焼「渓山窯」の蕎麦猪口たち。
有田焼は佐賀県の有田町周辺で作られている磁器の総称で、器好きならずとも、その名を知っている方は多いことでしょう。その中にあって、「蕎麦猪口といえば」必ず名が挙がるのが、この渓山窯です。
「三代続く窯元ですが、蕎麦猪口で知られるようになったのは、先代が、『蕎麦猪口はあまり種類がなく、集めるのが大変』と嘆く器店の声を受けて一念発起したことがきっかけでした」
蕎麦猪口は形やサイズがほぼ同じ。そこで多彩な世界を展開するために先代が始めたのが、柄の追求でした。
「資料などから掘り起こした古き良き柄に、自身が好きな動物の絵柄なども加えて、多くのバリエーションを生み出しました。蕎麦猪口には青の染付が使われることが多いのですが、こちらの色はのびのびとした柄のタッチに似合う明るめの青。また、赤や黄色など、蕎麦猪口には珍しい鮮やかな色を取り込んでいるのも、特徴のひとつです」
現在は、「いくつあるか分からない」というパターンの中から、100種類前後に絞って作っているという蕎麦猪口。どれも小ぶりで持ちやすく、いくつも欲しくなる可愛らしさ。
さらに、先代の娘さんである篠原祐美子さんが三代目を継いでからも、渓山窯の蕎麦猪口への飽くなき追求は続きます。
「有田焼の誕生400周年を受けて2017年に、自分たちの器を改めて見直そうという“つたう プロジェクト”が10の窯元で立ち上がったのですが、そこで渓山窯がメインの器として選んだのも、やはり蕎麦猪口でした」
このとき、3つのラインが新たに生まれます。そのうちのひとつが、「EDO CHOCO」。こちらは名前からも分かる通り、江戸時代の絵柄を復刻したものです。
「富士山や桜、矢羽根などのおめでたいモチーフが描かれています。サイズも江戸時代にもっとも一般的に使われていたものに近づけ、渓山窯の定番のものよりもやや大きめに作られているのが特徴です」
そして、もうひとつの「PREMIUM CHOCO」には、さらなるこだわりが。繊細で美しい吉祥文様を絵柄に選び、それを伝統工芸師がろくろでひいた生地に丁寧に描き付けて……と、職人技の粋を集めた、贅沢な蕎麦猪口を完成させました。
「揃いの柄の豆皿も用意されていて、桐の箱に入っているところもスペシャル。ご自分で大切に使うのはもちろん、特別な贈り物にもぴったりです。豆皿にはお菓子などをのせて添えてもいいし、受け皿として蕎麦猪口と重ねればよそ行きの雰囲気に。改まった席でお茶やお酒をお出しするシーンにも映えます」
素朴な染付から豪華な一品まで、あれこれ揃えたくなるのが渓山窯の蕎麦猪口。
「PREMIUM CHOCO」のように、今までにない使い方の提案も魅力です。
「江戸時代の蕎麦猪口は、蕎麦を食べるだけでなく、お酒を飲んだりとさまざまな場面で使われていた器です。今で言うマグカップやフリーカップのような存在。現代でも日常の器として、ぜひ多彩に使って欲しいと思います」
定番の蕎麦猪口は、例えばデザートカップにしてもいいし、先付や小鉢料理を盛っても決まります。
「スープをひと口、などという時に使っても素敵です。また、庭の花をちょっと飾ったり、いくつか並べて小物入れにしたり。シックなインテリアアイテムとしてもおすすめです」
お気に入りの柄を集め、日々親しみを持って使う。
「そんな蕎麦猪口の魅力を、年末のお蕎麦をきっかけに改めて見直していただけたら嬉しいです」
写真/田口昭充 文/新田草子
★記事で紹介した器は、上記の店舗でも実際にご購入・ご覧いただけます。
Made in Japanセレクトショップの先駆けである『THE COVER NIPPON』をディレクション。デザイナー・バイヤーの両視点を活かし、産地のブランディングや商品開発、店舗や展示会のコーディネート・PRなど幅広い領域で活動。日本のモノづくりを未来に繋げるために、つくり手とつかい手を繋いでいる。
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