庭コラム
季節を楽しむ、自然とつながるひとときを。
庭と器と私の時間
庭やテラスで使いたい器をシーズンごとの場面に重ねて提案するこのシリーズ。
ライフスタイルショップ『THE COVER NIPPON』のクリエイティブ ディレクター・松坂香里さんのナビゲートでお届けします。
まだまだ気温の低い日が続く今日この頃。庭のテラスで冬の朝のすがすがしさを味わってみませんか? ひんやりと澄んだ空気は、起き抜けの頭をすっきりさせるのにぴったり。マグカップに注いだ温かいコーヒーとともにその日の予定をリマインドすれば、きっと一日を気持ちよく始められることでしょう。
今回松坂さんが選んでくれたのは、そんな朝のリフレッシュタイムによく似合うマグカップ。シンプルだけれど温かみを感じる風合いのカップは、岐阜県で作られている美濃焼「東峰窯」のもの。美濃焼と聞くと昔ながらの、緑色の釉薬が特徴的な織部などを思い浮かべがちですが、こんなモダンな器も作られているのでした。
「美濃焼で知られる岐阜県の東濃地区は、人間国宝も輩出する一方で、早くから業務用の器を大量に作るしくみを培ってきた産地でもあります。大きな窯元になると、1日に作る器が一万個を超えることも。日本の器の約6割は、ここで作られています」
合理的な器作りを進めてきた日本随一の産地は懐も深く、「若い作家や、メーカーのもとで新たな器作りにチャレンジする若い世代も少なくありません」。
その中にあって、1日に最大で5,000個ほどを焼くという東峰窯。
「以前から作っている和食器のほか、強く割れにくい“強化磁器”の製造に取り組むなど、実用的で美しい器を作る試みにも意欲的な窯元です。東峰窯の器は、一見シンプルでスタイリッシュな器が特徴で、それは飲食業界で働いたことのある方が企画生産に携わっていることが影響しています。その方の経験が生かされて作られたデザインは、いずれもサイズや形など使い勝手が良いです。今回はそのうちの2種類の商品をご紹介します」
まずどちらの商品でも注目したいのが、緻密に考えられたフォルム。「例えばこのマグカップは、飲み物をたっぷりと飲めるサイズでありながら片手で持てて、大きさと重さのバランスがとても良い。私がマグカップを選ぶときは、デザインや色柄だけでなく、必ずいろんな持ち方をしてみて、使う人が持ちやすいかどうかを確認します。5本指で握る、あるいは人差し指を上部にひっかけて、などどんなふうにも持ちやすい取っ手に仕上がっています」
器の側面がやや垂直に立ち上がったデザインのプレートは幅広い料理に合わせやすく、サイズ違いで入れ子にできたりと収納もしやすい設計。
どちらも「機能美」という言葉がぴったりだけれど、ただ機能的なだけではなく、どこか味わいがあるのもこれらのシリーズの特長。「業務用の器は白いシンプルなものが多いなかで、こちらの窯では多彩な釉薬を使い分けることで、さまざまな表情を持つ温かみのある器を生み出しています。表情に微妙なニュアンスを残すために、釉薬がけも手で行っています」
シンプルでスタッキングしやすく、価格も手ごろで実用的だけれど、ほんのりと温かみがある。カフェなどの飲食店だけでなく、普段遣いの器としても人気が高まっているといいます。
さらに、ここに紹介したプレートは、「料理はもちろんのこと、インテリアアイテムとしてもおすすめです」と、松坂さん。「小さいものには付箋やメモ帳、大きいものは眼鏡やペン、などとデスクまわりのこまごまとした物を納めておくのに便利。ドレッサーにおいて、時計など毎日つけ外しするアクセサリーの定位置にするのも一案です」
また、緑になじむアースカラーと磁器であるという利点を生かして、エクステリアで使うのも素敵。
「例えば鉢植えのトレーにするのはどうでしょう。プラスチック製のものより味わいがあって、テラスの雰囲気もぐっと自然なものになるはず。夏は、蚊取り線香を置くトレーにしてもいいかもしれません。小さめの器は、犬や猫などのペットのための器などにしても」
奇をてらわない形と味わいのあるカラーで、肩肘張らずに使えるのにさりげない存在感がある。朝のコーヒータイムからワークシーンまで、さまざまな場面で活躍してくれるはずです。
写真/田口昭充 撮影協力/里山十帖 文/新田草子
★記事で紹介した器は、上記の店舗でも実際にご購入・ご覧いただけます。
Made in Japanセレクトショップの先駆けである『THE COVER NIPPON』をディレクション。デザイナー・バイヤーの両視点を活かし、産地のブランディングや商品開発、店舗や展示会のコーディネート・PRなど幅広い領域で活動。日本のモノづくりを未来に繋げるために、つくり手とつかい手を繋いでいる。
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